木の枝を集めて並べてみる。草花をちぎって色水を作る。石や土を手に取り、ただ触って確かめる。大人にとっては「なんでもないこと」でも、子どもにとっては立派な表現活動の入り口です。

自然とのふれあいは、表現の領域を育てるうえで欠かせない要素です。認定こども園教育・保育要領でも「身近な自然や環境に触れ、感性を豊かにすること」が大切にされています。自然の中には、予想もしない出会いや驚きがあり、それが子どもの想像力を刺激していきます。

たとえば、3歳児が落ち葉を集めて「これアイスクリーム!」と言って遊んでいたとします。葉っぱは食べ物ではありませんが、子どもは自由な発想でそれを「何か」に見立て、イメージを広げています。そのとき同時に、「手でつかむ」「重ねる」「並べる」といった動作を通じて、手指の動きや形を捉える力も育っています。

自然素材は、既製品のように決まった形や用途がありません。だからこそ、子どもは自分の思いつきを試し、工夫を重ねていくことができます。枝を並べてお家をつくる子もいれば、石を積み上げてタワーをつくる子もいる。同じ素材でも、子どもの数だけ表現の形が生まれます。

大人の目からは「ただ散らかしている」ように見えることもあるでしょう。でも、そこには「表現の芽」が隠れています。「どうしてこうしたの?」「おもしろいね」と声をかけることで、子どもは自分の発想を大切に思い、さらに豊かな表現へとつなげていきます。
作品展でも、自然素材を使った作品はよく並びます。そこには、子どもが自然の中で出会った驚きや気づきが表れています。色や形の美しさ、感触の面白さに触れることで、子どもは自分なりの表現を見つけていきます。

自然と出会い、感性を育てることは、子どもたちの表現力の根っこを養うこと。ぜひ日常の中でも、「ただ遊んでいる」ように見える姿を、「表現の一歩」として一緒に楽しんでいただければと思います。
次回は「五感をひらく ― 音・色・手ざわりの世界」について。子どもが感覚を使って遊ぶことが、どのように表現や創造性につながっていくのかをお伝えします。