一人で絵を描いたり工作したりするのも楽しいことですが、友達と一緒に表現活動をするとき、子どもたちはまた違った世界を体験します。大きな模造紙にみんなで絵を描いたり、ひとつの作品を数人で仕上げたり…。そこには協力や対話があり、「一緒にやるからこそできる表現」が生まれます。

教育・保育要領でも「友達と一緒に表現を楽しむこと」が大切にされています。子どもは他者と関わることで、自分にはなかった発想や技術に触れます。たとえば、「ここに青を塗ろう」と提案した子がいれば、「じゃあ私は赤にするね」と応える子がいる。そうやって違いを受け入れながら、一つの作品をつくり上げていくのです。

十和田めぐみ保育園では、毎年「うぐいす組(年長)」と「ひばり組(年中)」の子どもたちが6グループほどに分かれて取り組む 大型製作 があります。大型製作は、ただ大きなものを作るだけではありません。子どもたちが自分たちで「何を作るか」を話し合い、設計図を描き、材料を集めて組み立て、みんなで色を塗ります。最後には「どうやって遊ぶのか」を考え、プレゼンテーションまで行います。

つまり、大型製作は 企画から表現までのすべてを子どもが主体的に行う活動 なのです。大人が与えた課題に取り組むのではなく、自分たちで決めて形にしていくからこそ、一人ひとりの発想や工夫が生きてきます。

作品展では、この大型製作も展示されます。そして終わったあとも、子どもたちは自分たちの作品で遊び続けます。たとえば、大きな段ボールの家をつくったグループは、中に入ってごっこ遊びを楽しみます。迷路を作ったグループは、友達や保護者を招待して案内役になります。自分たちでつくったものを、自分たちで使い、遊び尽くすことで、表現の活動がさらに生活の中に息づいていくのです。

大型製作の完成品だけを見ると、「すごい!」と感じる方も多いでしょう。でも、それ以上に価値があるのは、その過程にあります。何を作るかを決めるときの真剣な表情、設計図を描きながら盛り上がる声、色塗りで手を真っ赤にしながら笑い合う姿。そして発表のときに「こうやって遊ぶんです!」と自信を持って伝える姿。それらすべてが、子どもたちの成長の証です。

作品展では、ぜひ大型製作の作品を見ながら「この裏にはどんな話し合いや工夫があったのかな」と思いを巡らせてみてください。そして、作品展のあとも遊び続ける子どもたちの姿を想像してみてください。そこにこそ「みんなでつくる表現活動」の醍醐味があります。

次回は最終回、「作品展で出会う ― 子どもたちの今」。シリーズを通してお伝えしてきた「表現の領域」を振り返りながら、今年度の作品展をどのように楽しんでいただきたいかをまとめます。