子どもたちは、物語の世界が大好きです。絵本の読み聞かせをしているとき、登場人物のセリフを真似したり、「つぎはどうなるの?」と身を乗り出したりする姿をよく見かけます。こうした時間の中で、子どもは自分の中に豊かなイメージを広げていきます。

認定こども園教育・保育要領では「豊かな想像力を働かせて生活をつくり出す」ことも表現の領域のねらいとされています。物語を通して育つイメージの力は、子どもが自分自身の遊びや表現を生み出す大きな原動力になるのです。

たとえば、絵本を読んだあとに「ぼくもおばけになりたい!」と毛布をかぶって遊ぶ子ども。お話に出てきた世界を、自分の体を使って再現しているのです。これも立派な表現活動。頭の中でイメージをふくらませ、それを遊びや制作に結びつけています

ごっこ遊びの中では、さらに想像の広がりが見られます。「わたしがお母さんね」「ここはお店だよ」と役を決めることで、子どもたちは自分の世界をつくり出します。ときには友達同士でイメージが食い違うこともありますが、そのやりとりがコミュニケーションの力を育みます

作品展に並ぶ作品の中にも、こうした物語の影響を受けたものがたくさんあります。子どもが描いた絵をよく見ると、好きな絵本の登場人物や、物語を自分なりにアレンジした姿が隠れていることがあります。「あ、このキャラクターはあの本に出てきたね」と気づいてあげると、子どもは自分の世界を受け止めてもらえたと感じて嬉しくなります。

大人にとっては「ただの遊び」に見えることも、子どもにとっては心の中の物語を形にする大切な営みです。作品展では、ぜひ「この子はどんな物語を思い描いていたのかな」と想像しながら作品をご覧ください。

次回は「いろんな文化とアートに出会う」。子どもたちが多様な表現に触れることの意味について、そして今の時代ならではのデジタルの世界から学ぶことについても考えてみたいと思います。