子どもたちの表現を豊かにするためには、さまざまな文化やアートとの出会いが欠かせません。自分とは違う表現方法や価値観に触れることで、「こんなやり方もあるんだ」「違っていてもいいんだ」という気づきが生まれます。

教育・保育要領でも「多様な表現に触れること」が大切にされています。絵画や音楽、伝統行事や地域の文化…。子どもたちが異なる世界に触れることは、表現の幅を広げる大きなきっかけになります。

そして、現代の子どもたちにとって身近な表現のひとつに「マインクラフト(Minecraft)」のようなデジタルの創造活動があります。ブロックを自由に組み合わせ、自分だけの家や街、冒険の舞台を作り出す遊びは、まさに「想像力を解き放つ世界」です。

今年度の作品展テーマ「MEGUMI CRAFT(メグミクラフト)」は、このマインクラフトと十和田めぐみ保育園を合わせたことばです。子どもたちが園で日々楽しんでいる表現活動を、「自由に作り、工夫しながら広げていく世界づくり」と重ね合わせています。

ただし、デジタルの中と実際のものづくりには違いがあります。マインクラフトの中では、ブロックは思いどおりに積み上がり、失敗してもすぐやり直せます。でも現実の積み木や紙工作では、バランスを取らなければ崩れるし、貼ったり切ったりするときの感触や抵抗も伴います。ここに、手で感じる「技術の学び」があるのです。

つまり、「メグミクラフト」というテーマには、デジタルの自由な創造性と、リアルなものづくりの手ごたえ、その両方を大切にしたいという願いが込められています。子どもたちには、どちらの世界でも自由に発想を広げながら、「やってみたい!」を実現していってほしいと思います。

作品展でご覧になる作品の中には、デジタルの文化に影響を受けた表現もあるかもしれません。四角い形の組み合わせや、ゲームの世界を思わせる構図…。そうした姿もまた、子どもたちが今を生きる証であり、「メグミクラフト」の世界の一部です。

ぜひ今年度は、「メグミクラフト」というテーマを手がかりに、子どもたちの作品を自由な発想の積み重ねとして味わっていただければと思います。

次回は「みんなでつくる ― 協働する表現活動」。友達と一緒に表現することで育つ力について、一緒に考えていきましょう。